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Anton Bruckner
ブルックナー

CD感想

交響曲第7番ホ長調

ブロムシュテット/SKD お薦め度:A+
カラヤン/ベルリンフィル お薦め度:S+

ブロムシュテット/SKD

ブロムシュテット

指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット
管弦楽:シュターツカペレ・ドレスデン
ハース版
レコーディング:1980年6月30日-7月3日
場所:ドレスデン、聖ルカ教会

 ブロムシュテットという指揮者、若いときからN響に結構客演していた。当時の私は、日本のオーケストラの実力を認めておらず、N響もその中の一つであった。確かに当時N響は日本最高のオーケストラであった。だが、それでも音色が硬くラジオで聴いても世界トップレベルのオーケストラとは比較するべくもなかった。だから、私はN響に客演する指揮者もまだ大成していない指揮者だと勘違いをしていた。私が10代のときの話。N響客演の指揮者にブロムシュテットもいた。それで、私はブロムシュテットの芸術性を見誤ることになった。悪い先入観があったのだ。少し自分を擁護させてもらうと、10代の若者には、そういった勘違いはちょくちょく起こり得る。また、20代はほとんどクラシックを聴かなくなった。
 時は流れて、35歳ぐらいのとき、クラシックを再び聴き始めた。で、ブロムシュテットのベートーヴェンとブルックナーがよいという評判を知った。早速購入したのが、このブルックナーの交響曲第7番である。10代の頃、ブルックナーは8番以外あまり聴かなかった。8番の理解も浅め。その状態でこのCDを聴いた。しかも、PCの卓上スピーカーで。正直に言う。なかなか良さが分からなかった。だが、7番の良さを知り、視聴環境もそれなりに整えたところで聴いたところ、そら美しいサウンドであることが分かった。

ブロムシュテット

 私は思う。ブロムシュテットの魅力の一つは、オーケストラから優しく荘厳に響く音を引き出す力を持っいることだと。このシュターツカペレ・ドレスデンとの演奏では、この曲が持つ浮世離れしたブルックナーの純粋な精神性とブロムシュテットがオケから引き出す音が見事にシンクロして、天国的な美しさが聴こえてくる。ブロムシュテットはヴィーガンだと聞く。私にはヴィーガンは、どこまでも動物保護を追求している心優しい人たちという印象を受ける。ブロムシュテットのブルックナー交響曲第7番を聴いていると、まさに優しい心の持ち主だったブルックナーと心の対話をしているようである。決して装飾過多にはならず、純粋な美が聴こえてくる。
お薦め度:A+
(April.25.2020)
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カラヤン/ベルリンフィル

カラヤン

指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
管弦楽:ベルリンフィルハーモニー管弦楽団
ノヴァーク版
レコーディング:1975年4月
場所:ベルリンフィルハーモニー

 カラヤンとベルリンフィル。カラヤンはドイツ中から実力のある奏者を集め、次に世界中から実力のある奏者を集めた。そして、カラヤンは更にサウンドに磨きをかけた。元々ハイレベルのオケが更なるレベルに到達した。このブルックナーの交響曲第7番のサウンドは恐ろしくクリアで洗練された美しさを放っている。カラヤン得意のサウンドは、ゴージャスな響きなのだが、ブルックナーの交響曲に絢爛さは似合わない。ところが、カラヤンが指揮するブルックナーはゴージャスではない。豪華絢爛とはならない。ブルックナーの曲が透き通ったクリアなサウンドになり、ブルックナーの純粋な精神性がより際立つ。第2楽章アダージョの美しさと言ったら筆舌に尽くしがたい。素朴な美しさではなく純粋な美しさである。この演奏をブルックナーが聴いたらなんと言うであろうか。大喜びするに違いない。オルガンは重厚なサウンドが鳴る。そのオルガンの名手ブルックナーがイメージしていたアダージョはこのような重厚で純粋なアダージョではなかろうか。カラヤンインモスクワの「運命」ような熱いライヴ演奏も大好きだが、このブルックナーようなクールで純粋な演奏も大好きである。

カラヤン

 カラヤンのブルックナーを美しすぎると揶揄する人もいらっしゃるが、私にはそれのどこがいけないのか分からない。第3楽章では、力強いサウンドが聴ける。もちろん、クリアなサウンドである上に力強く重厚である。これほど美しく格好良い第7番のスケルツォはあるまい。やはり、バーンスタインのライバルであっただけにその実力は並外れている。もちろん、私は素人だが、どの楽器の奏者にどう指示を出すとこのような演奏になるのか皆目見当が付かない。どの楽器がどう演奏しているのか分からないのだ。普通は案外分かる。だが、この演奏は、各楽器が見事に融合して多様な一つの塊となっているため、楽器の動きを掴みづらい。それなのに音がクリアで鮮明なのだから凄い。だからかもしれないが、聴く度に発見がある。ティントナーやヨッフムのブルックナーも素晴らしいが、カラヤンのブルックナーも素晴らしい。  
お薦め度:S+
(April.20.2020)
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