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JOHANNES BRAHMS
ヨハネス・ブラームス

曲目解説&名盤紹介

交響曲第2番ニ長調

曲目解説
 この交響曲は、交響曲第1番の大成功により、ほっと一息を入れるために、避暑地である南オーストリア・ヴェルター湖畔のペルチャッハでブラームスは休息を取った。この時、この第2交響曲に着手した。わずか4か月という短期間で完成。20年以上かかった第1交響曲とは対照的である。ブラームスの曲は哀愁を帯びた曲が多いが、この曲は違う。大成功したことも大いに影響したのであろう。幸福感に満ちた楽想になっている。さらに言うなら、ブラームスの得意な曲とはこういう明るい楽想の曲かもしれない。得意でなければ短期間で書き上げることなど不可能なのではなかろうか。

 第1楽章から見ていこう。ゆったり落ち着いた冒頭。このような出だしの交響曲はまずない。序奏とも違う。その後、緩やかに幸福感を歌い出す。この楽章を作曲したブラームスの気持ちは、大成功の幸せとペルチャッハの美しい自然に囲まれて心が洗われるような思いが相まった感覚であったと推測できる。それほど、気持ちよく曲が流れていく。繰り返しの指示を入れると、交響曲全体の半分ほどの演奏時間となる。それほど、気持ちよく曲を書いていたのであろう。

 第2楽章でも、同じ楽想である。今度はさらにゆったり奏され、ペルチャッハの夜の静けさでも表現しているような気がする。この楽章も第3、第4楽章より長い。気持ちの良い曲である。だが、途中、演奏者にとって難関が待ち受ける。気持ちの良い楽想の主題とは少し逆の副旋律が同時進行する箇所では、曲が崩壊しているケースをよく耳にする。この両旋律を両立させるのは、非常に難しいと思われる。ここをさらっと難なく演奏させることができる指揮者は少ない。
 第3楽章。今度は幸福感と言っても、弾むような感覚。ブラームスが気持ちよく体を揺らしながら、仮想で指揮棒を振っているイメージが浮かぶ。少し控えめでノリノリのブラームスといったところか。
 第4楽章。この曲はもう言うまでもない。気持ちの良い避暑地でのブラームスの大成功に対する感情の爆発である。終始ノリがよく、明るく、高揚している。この曲を聴いて気持ちが乗らない人はいまい。交響曲の締めくくりとしても最高の曲である。
 これだけの曲を4か月で作曲したのだから、絶対、このような曲のほうがブラームスは得意だったと改めて思う。

名盤紹介
チェリビダッケ/MPO お薦め度:A+

チェリビダッケ/MPO

チェリビダッケ

指揮:セルジュ・チェリビダッケ
管弦楽:ミュンヘンフィルハーモニー管弦楽団
レコーディング:1991年6月8日 ミュンヘン、ガスタイク・フィルハーモニー(Live)

 この演奏は、晩年のチェリビダッケによる。ミュンヘンフィルの音色もまさしくチェリビダッケの色をしている。速さもゆったりしているが、さほど気にならない。チェリビダッケの速さが気になる人はチェリビダッケの良さを理解できない人であろう。人それぞれ好みというものがあるので理解できないからダメという訳ではない。ゆったりめの速さを補って余りあるのが、たっぷりとした情感にある。特にチェリビダッケはブルックナーの交響曲、とりわけアダージョが素晴らしい。それもゆったりとして、ブルックナーの素朴で純粋な壮麗さを上限を超えて引き出しているから。

チェリビダッケ

 ブラームスの交響曲第2番は、第1楽章と第2楽章で曲の2/3ほどの長さになる。曲の核となる部分でもある。確かに第3楽章と第4楽章でブラームスの幸福感がMAXに達する。が、第1楽章、第2楽章の穏やかな曲を無視することはできない。この両楽章があるからこそ最後の2楽章も際立つのだ。通常、前半の2楽章は比較的難しく聴こえる。特に第2楽章では、途中、ヴァイオリンが落ち着く主題を奏でているとき、なぜか木管が不安になるようなニュアンスのメロディーというか動機のようなものを奏でる。これが実にアンバランスに聴こえるのだ。通常。この演奏でもやはりそこはヴァイオリンが奏でる主題が死んでしまいそうになるが、あまりにもヴァイオリンの音が深く情感たっぷりと鳴るため、アンニュイな雰囲気で押しとどめている。ここで主題が死んでしまうような演奏だと私は一気に聴く意欲が無くなってしまう。そういった演奏が案外多い。この演奏は、やはりチェリビダッケの美学が圧勝という形となっている。第1楽章、第2楽章の他の部位では終始、チェリビダッケ独特の落ち着いた鏡花水月の美しさである。音楽は幻のように手に取ることができないもの。この演奏は、それが見事に当てはまる。第3楽章、第4楽章の楽想は明るく幸福感に満ちているが、この演奏では前楽章同様の美を感じる。
お薦め度:A+
(April.21.2020)
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