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LUDWIG VAN BEETHOVEN
ベートーヴェン

曲目解説&名盤紹介

交響曲第6番ヘ長調「田園」

曲目解説

 この交響曲は、ベートーヴェン中期の傑作である。ベートーヴェンの曲は最後には勝利に向かうと言われる。そのことが、聴く人の胸を打つし、心を躍動させる。ベートーヴェンの交響曲はその最たる例で、そのどれもが最後には勝利宣言をする。一番有名なのは、もちろん第5番「運命」である。この第6番「田園」も同様に最後には聴き手の気持ちが最高に高揚する。勝利を歌う代わりに極めて崇高な歌を歌うことになる。



第1楽章「田舎に到着したときの愉快な感情の目覚め」
 表題どおり緑に覆われた落ち着く景色の田園地帯に到着したときのウキウキ感を表現している。誰しも子供の頃、田舎へ行って、自然と触れ合ったことがあると思う。その時のウキウキ感そのものである。私の場合は、親戚が田園地帯に住んでいることもあり、子供の頃、夏休みに毎年2週間ほど遊びに行っていた。山に入り、カブトムシを捕まえ、川に入り魚を捕まえたりした。川の水も少し上流に行けば、そのころは、エメラルドグリーンをしていた。トンボのギンヤンマの美しさにも驚愕した。その頃のウキウキ感がこの曲を聴いていると今でも蘇る。

第2楽章「小川のほとりの情景」
 曲を聴けば分かるとおり、川のほとりで寛いでいるとき、時間がゆったりと流れる。自然の美しさ満開である。決して造形された美とは違う。このように温かく包み込んでくれるような曲はまずもって田園だけであろう。

第3楽章「田舎の人々の楽しい集い」
 これは、近しい人が集まって田園風景を見ながら朗らかに談笑している、そんな感じに思える。お祭りかもしれない。踊りかもしれない。何しろ躍動感があり、楽しくなってしまう曲だ。

第4楽章「雷雨、嵐」
 タイトルどおり激しい雷雨である。田舎の雷をご存知だろうか。まさにこの曲のとおり、凄まじい轟き音が響き渡る。子供の頃味わったその恐ろしさは、今でも脳裏に焼き付いている。閃光が空間を縦ではなく横に切り裂いていく。この楽章でティンパニが、その雷のように激烈な打撃を繰り返す。また、激しい風雨の様子を弦楽器がうなりを上げ表現する。

第5楽章「牧歌 嵐の後の喜ばしい感謝の気持ち」
 激しい雷雨が段々遠ざかって行き、少しずつ晴れ間が覗いてくる。そして、風雨の重みで倒れていた稲穂が、また立ち上がる。そんな繊細な様子から曲が始まる。その後、美しい自然が戻り、得も言われぬ感情が湧き上がってくる。それこそが、ベートーヴェンがタイトルに書いたような「自然への感謝の気持ち」だと私は思う。そして、最後の最後に感謝の祈りを捧げているようだ。

名盤紹介

クリュイタンス/ベルリンフィル お薦め度:A
アーノンクール/ヨーロッパ室内管 お薦め度:A
クライバー/バイエルン国立管 お薦め度:A
セル/クリーヴランド管 お薦め度:S
カラヤン/BPO(モスクワLive) お薦め度:A
ワルター/COSO お薦め度:S+

クリュイタンス/ベルリンフィル

クリュイタンス

指揮:アンドレ・クリュイタンス
管弦楽:ベルリンフィルハーモニー管弦楽団

 クリュイタンスはフランスの指揮者。生まれはベルギーらしい。活躍した場所はパリ。パリ管の前身パリ音楽院管弦楽団とのラヴェルの管弦楽曲は有名である。だから、フランスの作曲家が得意レパートリーと思っている人が多いかもしれないが、実はクリュイタンスのベートーヴェンはほどよい緊張感とほどよい美しさを備えた名演奏である。この田園も同様。"ほどよい"演奏なのだ。あまりにも研ぎ澄まされていると、この曲は死んでしまう。ベートーヴェンは田園に行ったときの自身の気持ちを表現している。心温まる気持ちを表現しているのだからこそ、切れ味鋭い演奏は似合わない。別にアンサンブルが狂っていて問題ないと言っているわけではない。アンサンブルは精緻である必要はある。だが、表現、解釈がキレッキレではまずいということ。柔らかく美しく、しかし、ときには激しく。これを地で行っているのが、このクリュイタンスとベルリンフィルの演奏。文句の付けようがない。フランスっぽいのかどうかは知らないが、洗練されているが、決して温もりは忘れない。大自然の安らぎがここにある。カラヤンやフルトヴェングラーの田園よりずっと好きである。
お薦め度:A
(November.13.2019)
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アーノンクール/ヨーロッパ室内管

アーノンクール

指揮:ニコラウス・アーノンクール
管弦楽:ヨーロッパ室内管弦楽団

 最近、くしゃみと鼻水が止まらなくなった。花粉症ではない。風邪かなとも思ったのだが、体調については他は特に問題ない。今朝、原因が分かった。寝冷えである。先日寒くなったとき、そろそろ毛布だなと思い、使っているが、それでも今朝起きたとき、足というか太ももが冷えてることに気づいた。朝の冷え込みが厳しくなってきていたのだろう。昨日までは、鼻水などそのうち止まるだろうと高をくくっていたが、今朝起きても鼻水が止まっていないので、寝冷えだと思った。そういえば、私は毛布とか布団を着ると言うのだが、世間では布団を掛けると言う。方言なのかな。

 アーノンクールとECOの田園。ノンヴィブラートで有名だが、それよりもアーノンクールの田園の解釈に注目するべきである。アーノンクールの解釈は素晴らしい。伴奏の細部に亘るまで新たな解釈が聴こえてくる。しかも、自然。第2楽章など最高に癒される。ECOもすこぶる上手い。この全集を買って聴いたとき、それほど感銘を受けなかったが、今日改めて聴いてみて、素晴らしい演奏であることが分かった。こんなイイ演奏に気付かなかったなんて信じられない。私は、ピッカピカに磨いてとてつもなく美しく聴こえてくる「田園」はあまり好きではない。やはり、田園風景や田園にいるときに感じる気持ちが蘇ってくる演奏が好きである。この演奏は、聴き進むごとにそんな感覚になっていった。感動である。なんかもっとこう上手く伝えたいのだが、こんなに凄い演奏を聴いた後なのに不思議と言葉が出てこない。
お薦め度:A
(November.12.2019)
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クライバー/バイエルン国立管

クライバー

指揮:カルロス・クライバー
管弦楽:バイエルン国立管弦楽団

 私はクライバーのCDは3枚しか持っていない。そして、全てがLiveレコーディング。クライバーの真骨頂はやはりライヴではなかろうか。4番、7番しかり。そして、6番。
 クライバーの"田園"のCDを買うとき、戸惑いがあった。快速演奏の多いクライバーが田園を演奏したらどうなるだろうかと。ゆったりと落ち着く曲がどうなるのか想像もできなかった。逆にだからこそ購入した。一体どうなっているのか気になったから。このCDは、当然、何度も聴いているが、最初に聴いたときの印象をまず書きたい。速い。カラヤンより速い。自分の中での聴きどころをあっという間に過ぎ去っていく。とても田園の中で寛いで気持ちのよい気分に浸っているような感覚にはならない。さすがにこれは、自分には合わないと思った。だが、私は、買ったCDは何度も聴いてみたくなるのだ。一度聴いてよく分からないでは、勿体ないから。なんとか理解しようとする。それで、何度も聴くうちにやはり良さが分かってきた。快速演奏の良さも分かった。クライバーはやはり凄い。快速に飛ばしつつも歌うところは歌うのだ。これこそがクライバー。さらっと演奏しているようで、実は流れるように歌っているのである。これが心地よい。推進力があり、どんどん前に進んでいく。流れるようだから、もたもたしていると、音楽の流れに置いてかれる。初回聴いたときは、完全に流れに置いてかれたから、理解できなかったのだと思う。流れに乗れるようになると、とても心地よい演奏であることが分かる。間違いなく"田園"である。そして、終楽章の最後の最後に最大の仕掛けがある。このような演奏はクライバーでしか聴けないと思う。
お薦め度:A
(November.10.2019)
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セル/クリーヴランド管

セル

指揮:ジョージ・セル
管弦楽:クリーヴランド管弦楽団

 先日、近くの大きな公園を散歩しているとき、外国人がカメラで撮影していた。カメラを見てみると、なんと、デジカメではなくフィルムカメラを持っていた。たぶん、こだわりのある人なんだろうと思う。そこで、勇気を出して"Hello"と話しかけてみた。スペインの人だった。私の地域に住んで6年が経つという。近くの熱田神宮を訪問してるか尋ねたら、そこは好きな場所だと言っていた。そこで、熱田神宮の御神体は、剣だと話たら、日本の歴史にも興味があるらしく、三種の神器のことも知っていた。日本の重要な宝物だとも語っていた。なかなかの強者である。しかも、古事記も少し読んだという。グレートな人だと思う。英語の先生をやっていると言っていた。そんな感じがした。日本語も出来るからいわゆるトリリンガルだ。会話は少しだったが、2回も出会えてよかったと言ってくれた。柔らかい物腰でとても好感の持てる人だった。会話中、英語がなかなか出てこなくて困った。が、相手が日本語ができたのでコミュニケーションを無難にとることができた。もっと英会話力をつけたい。

 ジョージ・セルとクリーヴランド管弦楽団。切っても切り離せない関係というやつである。セルはクリーヴランド管を鍛えに鍛えて全米のトップ5のオーケストラに育て上げた。当然、私が生まれる前の話である。演奏を聴けば分かると思うが、超ハイレベル。一点の曇りもなく完璧なアンサンブル。初めてラジオで聴いたときは、10代だったがビックリしたのを記憶している。この「田園」でも見事な芸術性とアンサンブルに惹き込まれる。現代においても、このような演奏をそうそう聴くことはできまい。日本では、セルは完璧すぎてどうも...と言う人もいるようだが、私はそうは思わない。自分たちの表現をできる限り高みへと持っていこうとするのは当然だと思う。自分たちの芸術を細部にまでこだわり表現することの何が悪いのだろうと思ってしまう。細部にまでこだわるというのは、作曲者であるベートーヴェンへのリスペクトの裏返しでもある。本当に素晴らしい演奏で、"エクセレント"と言いたい。惹き込まれる。何度も聴きたくなる演奏である。セルとクリーヴランド管の芸術の結晶。天に向かって、もろ手を上げたくなるほど感動する。内容について少し書くと、スッキリと清々しい演奏で且つアンサンブルに奥行きがある。表現が実に自然で、すーっと曲に没入してしまう。前述のとおりアンサンブルも見事なので、聴いてて途中で、ん?などとなる箇所は全くない。逆に感嘆することが多い。なにより曲に没入できるところが素晴らしい演奏であることを物語っている。
お薦め度:S
(November.8.2019)
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カラヤン/BPO(モスクワLive)

カラヤン

指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
管弦楽:ベルリンフィルハーモニー管弦楽団

 11月にして、ようやく秋らしくなってきた気がします。近くの白鳥庭園の紅葉を楽しみにしている。毎年見に行くわけではない。それどころか、今まで一度も行ったことがなかった。見に行ったことのある家族によると、なかなか良いと評判。それで、今年は見に行こうと色づくのを待っている。地球温暖化の影響で、秋になっても暑い日々が続くから、秋でも秋ではなくなっている。結局、冬間近にならないと紅葉はダメなのだ。どうやら、白鳥庭園の紅葉が楽しめるのは11月中旬から末ぐらいまでのようだ。気温も下がってきた。外では軽い上着が必要にもなってきた。とは言え、先日、ウォーキングしていると、Tシャツ姿の女性がウォーキングしていてビックリした。私の場合、さすがにTシャツだけでは寒い。なかなかの強者である。

 さて、カラヤンとBPOによるモスクワライヴの「田園」について。速い。そして、美しい。なんというか、この田園は賛否両極端に分かれそう。賛否と言うより好き嫌いと言うべきか。カラヤンは、音楽をより劇的に表現する特徴を持っていた。だからこそ、チャイコフスキーなどの曲も得意だったのだろう。ところが、ベートーヴェンの「田園」は劇的にする指揮は向いていないと私は思う。オペラを指揮するようにやると、どうにもワルター指揮の演奏のように感動できない。速いのは、人それぞれ好みがあるし、私も慣れてきたし、問題ないと思う。だが、劇的に演奏してしまうと、私の場合、田園の風景が脳裏に出てこないのだ。そこで、好き嫌いが極端に分かれる気がするのだ。私がクラシックを聴き始めたころ、ベートーヴェンの第9のレコードを買った。カラヤンとBPOである。それはそれは繰り返し聴いた。聴くたびに感動した。そこで、「田園」のレコードもカラヤンとBPOのを買った。ところが、ワルターとコロンビア響のを聴いていたためか、一度聴いただけで二度と聴かなくなった。ワルターのような柔和な演奏とは対極にあるのかもしれない。では、なぜこのモスクワライヴを買ったのか?それは、視聴して5番を凄いと思ったから。ただ、私も色々聴いてきたので、色々な表現が分かるようになってきた。昔とは違う。これはこれでいいとも思う。カラヤンの表現している「田園」は、ただ一言、”エクセレント”と言えると思う。のんびりした気持ちで聴くのではなく、煌びやかにおしゃれしてコンサートに出かけて聴いている感じとでも言おうか。とにかく、エクセレントなのだ。これはこれで、凄いと思わずにはいられない。また、ライヴの熱気も伝わってくる。
お薦め度:A
(November.6.2019)
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ワルター/COSO

ワルター

指揮:ブルーノ・ワルター
管弦楽:コロンビア交響楽団

 先日、健康診断を受けて、その結果が、悪かったので医師に指導してもらおうと思い、本日、信頼している先生に診てもらいました。健康診断の結果は、中性脂肪が多く、コレステロール値も高くなっていた。先生に食べ物は何が好きか聞かれ、”揚げ物”と答えたら、”そのものズバリだね”と言われました。NHKなどでバランスの良い食事が紹介されているから、そういうものをチェックして、作って食べたほうが良いと言ってました。”まぁ、ようするに食べ過ぎだ”とも言われました。それから、運動も続けるように言われたので、筋トレ、ウォーキングは続行しようと思います。そうそう、結果が悪かったのを見たとき、結構ショックを受けました。筋トレして筋肉が付いてきてるのに何故?と思いましたね。分かったことは、いくら筋肉をつけて基礎代謝量を上げても、それ以上に食べていたということ。筋肉が付いてきたとき、基礎代謝量が上がったから、もう少し食べてもいいだろうと思い、少しのつもりが結構食べていたということだと思います。思い当たる節あり。ははは。これからは、青魚中心でいきたいと思います。でも、たまにはステーキが食べたい。これがダメなのかも...筋トレ後に飲むプロテインもソイプロテインにしたほうがいいのかもしれない。

 さて、今回は「田園」の超有名な演奏。指揮はブルーノ・ワルターで、オーケストラがコロンビア交響楽団。若い人はあまり知らないかもしれない。半世紀以上前のレコーディングだから。けど、これほど色褪せない演奏もそうそうない。世界中で聴かれ続けている。思うのだが、この演奏のレコード、CD、それからファイルダウンロードなどの総売り上げ枚数は一体どれくらいなのだろう?まるで見当が付かないが、凄まじい数になることは間違いない。もう一度書くけど、ステレオ録音技術が開発された頃の録音だから、50年以上経過しているのだ。50年以上売れ続けてる演奏なのだ。
 演奏は、選りすぐりのオーケストラメンバーだけあり、超ハイレベル。しかも、聴いてて非常に温もりを感じる。ゆったりとした演奏で、ベーレンライター版の演奏とは対極を為すかもしれない。ベートーヴェンの交響曲は、ベーレンライター版が全盛だから、ベーレンライター版に慣れている人は、演奏が遅いと感じるかもしれない。しかし、少し聴いていれば必ず速度に慣れてくると思います。なぜなら、演奏内容が凄くいいから。演奏に惹き込まれると思います。そして、ワルターのファンになるでしょう。凄い演奏というのは時代を超越してしまうのかもしれませんね。ワルターのベートーヴェンの交響曲全集を何度も買おうと思いつつ、結局いつも買いそびれてしまいます。4番、7番を聴いてみたい。3番、5番、9番は聴いたことがあるから。未聴CDが無くなったら買おうと思います。いつのことやら...
お薦め度:S+
(November.5.2019)
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