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LUDWIG VAN BEETHOVEN
ベートーヴェン

曲目解説&名盤紹介

弦楽四重奏曲第15番イ短調

曲目解説

 全5楽章。ベートーヴェンの後期弦楽四重奏曲のガリツィンセットの3曲の内の一つ。ベートーヴェンの後期SQは、どれもが、19世紀初頭に作曲されたとは思えない内容となっている。ベートーヴェンの最晩年であり、ベートーヴェンが到達した境地があまりにも深く、楽想は現代的とさえ言える。20世紀に作曲されたと言われたとしても違和感がない。極めて先鋭的である。

 第1楽章。前述したとおり、ベートーヴェンがこの時期新たな境地に達していたことを物語る難しい楽想のメロディーである。過去のどの曲の楽想にも似ていない。また、ベートーヴェン特有の苦悩と闘争というイメージもない。よく言われるように哲学的で、深く憂慮しながら黙考しているようである。この時期、ベートーヴェンは、重い病を患っていたのだが、それと関係しているのかもしれない。第3楽章は大きく関係している。

 第2楽章。調べてみると、メヌエットに近い形式のようだ。だが、私には緩やかな踊りというより、穏やかに病が癒えた喜びを噛み締めているような印象を受ける。要はベートーヴェンの心が和やかに弾んでいるような感じである。決して踊る曲を書きたかったわけではあるまい。第2主題は、ビックリするほど美しく素朴なメロディーが出てくる。心が洗われる。ここで、ベートーヴェンらしい闘争が若干登場するが、すぐ穏やかな喜びにの旋律に置き換わる。



 第3楽章は、ベートーヴェンが付したタイトルがある。「リディア旋法による、病より癒えたる者の神への聖なる感謝の歌」である。リディア旋法とは、バッハの時代よりもっと古い時代の音楽理論。音楽理論より何より病が癒えたことでベートーヴェンが神に感謝をしているということが重要だと思う。無神論者とも言われるぐらいのベートーヴェンが神への感謝を表明しているのだ。それほど重い病を罹っていたということ。この全楽章中、抜きんでて長いこの楽章がこの第15番の核でもある。それゆえと言っていいのか分からないが、難しい。一番難しい楽章である。だが、理解できた途端、一番好きな楽章になるであろう。それほど素朴で美しく崇高な音楽である。この楽章へのベートーヴェンの指示は、モルト-アダージョ。極めて緩やかにという意味。ベートーヴェンの感謝の意がこれでもかと表現されていて、心を強く打たれる。泣けてくる。

 第4楽章。間奏曲。この楽章は、第3楽章の感謝の気持ちから、体が癒えて立ち直っていく第5楽章への繋ぎの役目を持っているのではなかろうか。

 第5楽章。非常に有名なメロディーが冒頭から流れる。このメロディー、少し憂慮している感がある。第3楽章で喜びはしたものの普段の生活へ戻ったとき、再びベートーヴェンの闘争が始まる。それで、闘いを覚悟しなくてはならない憂慮感ではなかろうか。私の勝手な解釈ではある。それにしても何という心が締め付けられる曲であろうか。

名盤紹介
ズスケQ お薦め度:A+
ゲヴァントハウスQ お薦め度:A+
エマーソンSQ お薦め度:S

ズスケQ



演奏:ズスケ四重奏団
レコーディング:1977年4月
場所:ドレスデン、ルカ教会

 ズスケQは、分かり易い演奏をしてくれる。ベートーヴェンの弦楽四重奏曲を初めて聴く場合、このカルテットをお薦めする。私は安かったこともあり、全集を購入した。もう、何度となく聴いた。聴けば聴くほどに曲の新たな良さに気付かされた。曲目解説でも書いたのだが、この曲の核は第3楽章である。冒頭からゆったり流れるベートーヴェンの「神への感謝の気持ち」が、深い息遣いで奏される。この演奏を聴いて思うことは、ズスケQは、いつも真摯に曲に取り組んでいるということ。丁寧に情感を込めているのが伝わってくる。
お薦め度:A+
(April/28/2020)
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ゲヴァントハウスQ



演奏:ゲヴァントハウス四重奏団
レコーディング:1998年2月
場所:ベルリン-ヴァンゼー、聖アンドリュー教会

 皆様、こんにちは。最近、英語の勉強を結構本気になってやっています。結構と書いたのは、本気になろうとしても、何をどう頑張ればいいのかよく分からないというのがあるからです。単語を憶えるにしても、単語だけ憶えるだけではダメで、例文というか使い方まで一緒に憶えないとダメじゃないですか。そうすると、例文まで憶えようとすると、一日で憶えられる数が知れてる。また、外国人を見かけたら声を掛けようと思い始めたのですが、会話をどう切り出したらいいのか分かりません。順調に例文で単語を憶えてきてると思ってましたが、会話の切り出し方が分からないということで、何か憶える単語の順番を間違えているのでは?と思うんです。だから、猪突猛進で英会話を勉強しようとしてもできないという状況に陥ってます。ですが、今こう書いていると、何やらどうしたらいいのか、うっすらではありますが、分かってきた気がします。いや、不思議だ。ははは。
 ところで、ここ数年外国人観光客?が急増している気がします。中国人が多いのは知ってましたが、欧米系の外国人が増えてる気がします。来年のオリンピックの影響という人がいますが、本当でしょうか?オリンピック前に日本へ来てどうするのでしょうか?私が外国のオリンピックの観戦に行くのであれば、オリンピックの期間中に行くだけです。ですから、オリンピックは関係ない気がします。日本への旅行のPRを外国でかなり大大的にやっているのか、それとも日本の文化などにたいへん興味をもってくれているのか。いずれにしても安い旅行にはならないと思うので...そうでもないか。バックパックぽい人もいるから、安めのビジネスホテルなどに泊まれば、安くあがるかもしれない。電車賃は、ばかにならないと思う。が、日本版のユーレイルパスのようなものがあれば、確実に安く旅行が楽しめると思います。ありそうな気もしますが...まあ、なんにせよ、日本に来るお客さんには楽しんでいってもらいたいものですね。

 さて、ベートーヴェン。こちらは、エマーソンSQとは対照的な演奏の新ゲヴァントハウスSQ。実にオーソドックスで調和のとれた演奏だと思います。ズスケSQのようなオーソドックスタイプです。ですが、ヴィオラやチェロまで音がよく通っていてよく聴こえます。全体が固まりのようにはならず、4人の解像度がイイです。録音技術もあるのでしょうが、演奏の上手さが解像度UPに起因していると思います。ベートーヴェンの後期弦楽四重奏曲は傑作揃いですが、この曲も全楽章聴き応え十分の名曲です。中でも、第3楽章が特に聴き応えがあり、この曲の大きな山場になっています。この楽章でのゲヴァントハウスSQの演奏は見事と言う他ない。流麗に演奏しつつメリハリも付いていて感動的。次の明るく少し躍動感のある第4楽章が際立つほどに柔らかく祈りにも近い静寂で楽章が終わる。第5楽章は、これまた主題が非常に有名な旋律で、晩年のベートーヴェン独特の得も言われぬ世界が広がっている。とあるアメリカ人が、晩年のベートーヴェンに弦楽四重奏曲の作曲を依頼したロシアの外交官は間違いを犯したと語っている。何が間違かと言うと、そのとき、ベートーヴェンに依頼すべき曲は、交響曲かオペラだったと。たいへん納得がいく。このように凄い弦楽四重奏曲を作曲したのだから、交響曲やオペラだったら...考えるだけでもワクワクする。だが、過去は変えられない。この凄い弦楽四重奏曲を目一杯楽しもうではないか。ふはは。
お薦め度:A+
(September/27/2019)
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エマーソンSQ

エマーソン

演奏:エマーソン弦楽四重奏団
レコーディング:1994年4月
場所:ニューヨーク、アメリカ文芸アカデミー

 エマーソン弦楽四重奏団のベートーヴェン全集から第15番。このエマーソンSQのベートーヴェンを聴いていると、他の演奏では得られない感覚がある。心が和むのだ。なんとも優しいタッチの演奏。しかも、全曲に亘って流れに任せて演奏するというところがない。細部に至るまで練りに練って構築されている。全5楽章の内、どの楽章が皆さんのお気に入りでしょうか?私は、この演奏を聴くまで第5楽章が一番好きでした。が、現在は第3楽章が一番好きになりました。第3楽章は、この曲の核となる楽章です。ベートーヴェンが病いが癒えたことによる神への感謝の念を曲にしており、バーンスタインが言う”ベートーヴェンの曲からは天使の声が聴こえる”という言葉がピッタリはまります。この演奏には、この名曲を更なる高みへ押し上げている印象があります。本当に隙がないから、気が抜けない。
 この曲、この演奏を聴いていると、感謝の念がふっと心に宿ります。この感謝の念とは、特定の何かに対するものではなく、私の場合、自然に足を踏み入れたとき抱くような、なんとも形容しがたい感情です。心が健康になるのが分かります。不屈のベートーヴェンの曲は、どれも心を癒し、さらに元気にしてくれる曲ばかりです。そのような曲をエマーソンSQは、ベートーヴェンと会話して、この曲の解釈を伝授でもされてきたかのように、これ以上ない演奏で私の心を健康にしてくれます。月並みな言い方ですが、入魂の演奏です。これ以上の演奏があるとは思えない。
 来年はベートーヴェンイヤーです。生誕250年。楽しみです。
お薦め度:S
(September/8/2019)
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