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Bruno Walter

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LUDWIG VAN BEETHOVEN
ベートーヴェン

CD感想

弦楽四重奏曲第12番変ホ長調

ズスケ四重奏団 お薦め度:A+
エマーソン弦楽四重奏団 お薦め度:A+

ズスケ四重奏団

ズスケ四重奏団

演奏:ズスケ四重奏団
レコーディング:1978年11月 ドレスデン、聖ルカ教会

 私にとって、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲のスタンダードはこのズスケカルテットの演奏である。全集を持っている。この全集を聴きまくった。どの曲もズスケの演奏は理解し易かった。弦楽四重奏曲というと、難しいイメージがあり、なかなか手が出ない。私もそうだった。だが、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲がとてつもなく素晴らしく、クラシック音楽の金字塔だと言う人がいたので、これは聴かねばなるまいと思い、10年ほど前に手を出した。確かに金字塔である。初期の作品から素晴らしいのだが、やはり一番素晴らしいのは、後期の曲である。後期は第12番~第16番のことを指す。そして、中でも飛びぬけて素晴らしいのがガリツィンセットと呼ばれたりする第13番~第15番である。ベートーヴェンが作曲した順番は番号順ではない。第15番、第13番、第14番という順序となっている。また、後期弦楽四重奏曲の面白いところは、作曲順が第12番、第15番、第13番、第14番、第16番となっているのだが、各曲の楽章数が1楽章ずつ段々増加していくこと。第12番が全4楽章、第15番が全5楽章、第13番が全6楽章、第14番が全7楽章。最後の第16番だけは、最初に戻って全4楽章となっている。ベートーヴェンが意図的にそうしたとしか思えない。

ズスケ

 話をこの曲の演奏に戻す。最初に聴きまくったということもあるが、伝統的というか正統派な演奏なのではないかと思う。では、正統派とはどういうことか?まず、ヴァイオリンの音がよく通り、楽器間の音量バランスにも優れ、ゆったりした演奏だと思う。伝統的な演奏は、第1ヴァイオリンが主役で、演奏を引っ張る。だから、ヴァイオリンの音が通りの良いサウンドでなくてはならない。ズスケの演奏は見事にそれをやっている。レコーディング年を考えると風化してもおかしくない年代のレコーディングである。エマーソン弦楽四重奏団という凄いカルテットが登場した後もズスケのベートーヴェンは聴かれ続けている。温もりがあり、ベートーヴェンらしく純粋。そして、聴後の充実感。そういう演奏ではなかろうか。弦楽四重奏曲の初心者にはズスケの全集をお薦めする。
お薦め度:A+
(April.23.2020)
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エマーソン弦楽四重奏団

エマーソン

演奏:エマーソン弦楽四重奏団
レコーディング:1994年3月 ニューヨーク、アメリカ文芸アカデミー

 エマーソン弦楽四重奏団のベートーヴェン全集から第12番。このカルテットの凄さは聴いていただければすぐに分かると思う。弦楽四重奏曲というと、基本的には、第1ヴァイオリンを中心に曲を組み立てていく印象が強い。が、エマーソンSQは違うのだ。4人それぞれが主役を張っている。それでいて、他者と喧嘩することなく、上手くまとまっている。それだけではない。何と言っても解釈が凄い。現代にベートーヴェンがタイムスリップできたら何と言うであろうか?ビックリして言葉が出てこないかもしれない。常識や想像を遥かに超える解釈である。しかも、各奏者が、リズムに乗りながら要所要所でドライヴしてるのだ。疾走感あふれ、紅潮させられたかと思うと、じっくり深い呼吸で心に迫ってくる。

エマーソン弦楽四重奏団

 特に圧巻なのは第3楽章。元々スピードアップする箇所ではあるが、その速度が尋常ではない。しかも、ハッとさせられるどころではない。驚愕した感覚で心が揺さぶられるのだ。第4楽章も実に感動的である。大胆だが優しい。
 ベートーヴェンの後期弦楽四重奏曲の中で12番はさほど人気あるわけではない。いや、ある。あるけど、13、14、15番の人気に押されてる感じである。あまり聴かない人ほど、このエマーソンの12番を聴いていただきたい。感動すること請け合いである。ズスケQのがオーソドックスの名盤とすれば、エマーソンQのは、最先端の名盤である。
お薦め度:A+
(June.24.2019)
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