ADAGIO MISTERIOSO

著作権について

LUDWIG VAN BEETHOVEN
ベートーヴェン

CD感想

ピアノ協奏曲第5番変ホ長調「皇帝」

ルービンシュタイン/バレンボイム/LPO お薦め度:S
ダグラス/カメラータ・アイルランド お薦め度:A+

ルービンシュタイン/バレンボイム/LPO

 ルービンシュタイン

ピアノ:アルトゥール・ルービンシュタイン
指揮:ダニエル・バレンボイム
管弦楽:ロンドンフィルハーモニー管弦楽団
レコーディング:1975年3月10,11日
場所:ロンドン、キングスウェイホール

 私は以前、ブレンデルとゼルキンの演奏を聴きまくっていたため、この二人の演奏が私の中でのスタンダードになっていた。ルービンシュタインのピアノは、この二人とはまるで違った。明るく、軽く、絢爛、そして、流れるような演奏である。優雅なのだ。聴き惚れるとはこのことである。この演奏を聴いてから、この曲のスタンダードは、ルービンシュタインになった。これを超える演奏はそうそうないと思う。ベートーヴェンの有名曲というと、意思が固く、闘い続けるものが多い。そんな中、この「皇帝」は、優雅なイメージが強い。だから、強烈な打鍵の演奏は如何なものかという気がする。この演奏を聴くと尚更その考えが合っているように思える。

ルービンシュタイン

 バックのオーケストラはというと、バレンボイムが絶妙にルービンシュタインをサポートする。オケが主張するところもルービンシュタインに合わせるが如く優しく柔軟に音を響かせる。元々バレンボイムは楽器単体を強く主張させるというより、ハーモニーを大切にして、合奏時に聴いたことのないようなサウンドをオーケストラから引き出す。因みに、私はバレンボイムのことを"音の魔術師"と呼んでいる。ルービンシュタインとバレンボイム、この二人の組み合わせを誰が考えたのか知らないが、パーフェクトである。
お薦め度:S
(April.26.2020)
ページトップへ戻る

当サイト運営者への連絡・意見・要望
ダグラス/カメラータ・アイルランド

 ダグラス

ピアノ&指揮:バリー・ダグラス
管弦楽:カメラータ・アイルランド
レコーディング:2006年4月8,9日
場所:ダブリン、ヒーリクス・シアター、マホーニー・ホール

 バリー・ダグラスといえば、チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番である。何十年も前ではあるが、それはもう聴いたことのない素晴らしい演奏だった。このような解釈があるのかと。そして、ベートーヴェンをダグラスが弾いたらどうなってしまうのだろうと、ずっとレコーディングをして欲しいと10年以上前に思っていたところ、その当時、発売された。驚きと喜びと期待が入り混じって聴いた。ところが、私自身、この曲の演奏スタイルはルービンシュタイン以外はあまり好きになれないということに気づいていなかった。現在は違う。発売当時、それほど好きになれなかった。だが、私の耳もさらに進化した。現代音楽も理解できるようになってきたのだ。そこで、ずっと気になっていたこの演奏を聴いてみることにした。気になっていたというのは、ダグラスの演奏で好きになれないというのは、どうにも腑に落ちなかったということ。それで、いつか必ず良さの分かるときが来ると思っていた。案の定。今になってようやく理解し始めた。

バリー・ダグラス

 ダグラスとカメラータアイルランドは色々やっている。非常に濃い演奏である。オーケストラの編成も小さく、チェロやコントラバスの響きが、少数ということを教えてくれる。心地よい。小編成というと、響きがこじんまりしていて、伸びやかさが、大編成に比べて劣る。その分、各奏者の細かなニュアンスが伝わってくる。そこが、この演奏に凄くマッチしている。というか、そういう演奏を意図してやっている。また、ピアノとオーケストラの掛け合いが上手い。主役のピアノが控えめに弾いたりする箇所もあり、一体感を感じる。ピアノにも煌びやかな派手さはないが、質実で柔軟。ピアノの内声、外声の分離が素晴らしい。これはレコーディング技術というより、ダグラスのピアノの特徴である。普通、どんな曲、演奏でも曖昧というか、各パートが混ざり合う部分があるのだが、ダグラスが弾くと決して、曖昧にならない。はっきりと各パートが聴こえた上で混ざり合い、しかも、そこへ、ダグラスのキリリと引き締まったスマートな解釈が加わるのだ。そりゃ感動するに決まっている。是非、聴いて欲しい演奏。

 この曲は、全集として発売されていたものの中からの1曲です。他の5曲も楽しんで聴いている。5曲というのは、トリプルコンチェルトも収録されているから。未聴のCDが多すぎて、なかなかこのCDを聴けなかったが、とうとうじっくり聴けた。全6曲、楽しんで聴いていこう。
お薦め度:A+
(April.20.2019)
ページトップへ戻る

当サイト運営者への連絡・意見・要望
Copyright (C) ADAGIO MISTERIOSO. All Rights Reserved.
inserted by FC2 system