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JEAN SIBELIUS
ジャン・シベリウス


 フィンランドが誇る作曲家。シベリウスの曲は他の作曲家の曲とは決定的に違うものがある。それは、シベリウスの曲に人は存在しないということ。シベリウスのほとんどの曲がそのように聴こえる。聴こえてくるのは、人の感情ではなく、自然の息吹である。このような楽想の作曲家を私は知らない。ワルツを聴いても人が踊っているというより、秋から冬に移り行くような儚い美しさを感じてしまう。そう、シベリウスの曲は、冬の音楽である。フィンランドという土地柄もあるのかもしれないが、どうしても凍て付く大地を想像してしまう。北欧の厳しい冬を表現しているわけではないとは思うが、そういったイメージがどうしても湧いてくる。最初は取っ付きにくく分かり難い音楽と感じるかもしれないが、クラシック音楽を聴き続けていると、シベリウスの曲の清々しさと純粋で雄大な楽想に気付く時が来る。そうなると、立て続けにシベリウスを聴くのは疲れるが、時折、無性に聴きたくなる。心が洗われるような曲が多い。私にとっては、そんな作曲家である。

シベリウス

 そこで、少し疑問に思うのは、シベリウスは一体誰の影響を受けた作曲家なのだろう?ということ。私がぱっと思い付くのは、チャイコフスキーの交響曲第1番「冬の日の幻想」である。この曲はシベリウスの曲に少し通ずるものがある。非常に冬の日を巧く表現している名曲である。だが、シベリウスがこの曲に影響を受けたとは思えない。そうなのだ。前述したとおり、シベリウスの曲に人の感情は登場しない。だから、他の作曲家の曲とは似ても似つかない。印象が随分と違う。だから、音楽教育は受けはしたが、全く新しい音楽を作り上げた稀有な存在の作曲家と私は思う。

 ここで、有名なシベリウスに纏わる歴史の話を少し。シベリウスの生きた時代は、ヨーロッパが非常に不安定な時代。しかも、フィンランドは地政学的に帝政ロシアとスウェーデン王国に挟まれた国。ロシアの港は冬になると凍ってしまう。だから、凍らない海をどうしても手に入れようとしていた。そこで、ロシアは西へ拡大しようとする。その西にあるのが、バルト三国とフィンランド。バルト三国はあっという間に併合され、フィンランドも落ちた。そのとき、シベリウスは怒り、「フィンランディア」という曲を作曲した。この曲は非常にフィンランド人の心に響いて刺激した。独立機運が高まったりしたのだ。そこで、ロシアは危機感を抱き、この曲の演奏を禁止した。このとき以来、シベリウスはフィンランド人にとって誇りの作曲家となった。フィンランドのオーケストラもレベルが高く、特にシベリウスの曲は得意中の得意としている。欧米の国々は自分の国の作曲家を大切に思っている人が多い。一方、日本は過去の偉大な作曲家のことはどんどん忘れていく。シベリウスとは関係ないが、偉大な足跡を残した人は大切にしなくてはならない。と私は思う。


曲目解説&名盤紹介(お薦めCD)

交響詩「フィンランディア」

「カレリア」組曲

交響曲第1番ホ短調
交響曲第2番ニ長調
交響曲第3番ハ長調
交響曲第5番変ホ長調

ヴァイオリン協奏曲ニ短調
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