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ROBERT SCHUMANN
ロベルト.シューマン


 作曲家のイメージというと、私の中では温和であったり、情熱は内に秘め外見は至って冷静を保っとるような人である。なかなか気持ちを表に全開で出さないタイプな印象を持っとる。だが、シューマンに対する印象は随分違う。何故なら、他の多くの作曲家が出来なかったことをやってしまったからである。それは、自分が惚れまくって世界一好きな女性を自分のものにしてしまったということである。それも財力などにモノを言わせてとかいうやり方ではなく、自分の気持ちを上手く伝え、彼女(クララ)を掴み取った。更には、彼女の父親が結婚に反対していたにも関わらず、結婚をしたのである。シューマンはそれほどの力があったわけではない。いや、作曲の才能がずば抜けていたことは事実だが、それが世間に認められるのはまだ後のことなのだ。だが、シューマンは、その時代のスーパープレイヤーであるクララ.ヴィークをものにしたのである。凄い男である。では、一体クララはロベルトのどこに惚れたのであろう?優しさであろうが、それをどうやって感じ取ったのであろうか?やはり、ピアノを通じて、自分の作曲した曲を元に会話をしたのではあるまいか。その会話の中で、お互いの魅力に気付き更に惹かれ合っていったのであろう。だからこそ、2人は強い絆で結ばれた。

シューマン

 さて、シューマンの作る曲について書いていこう。シューマンの得意分野は言わずもがな、ピアノ曲である。シューマンのピアノが入る曲を聴くと、やはり入ってない曲より一段と深みが増しとるように思える。もちろん、交響曲に深みがないという訳ではない。楽想について考えると、一聴すると華やかさが聴き取れる。シューベルトまでのピアノ曲とは確実に違う。明らかに新時代を思わせる楽想である。曲の造りも明らかに新たなものを創造したことが窺える。ところで、シューマンとショパンは同い年である。それに対してショパンはピアノの詩人などと言われ、確かに新たなピアノ曲を創造し人気を博した。では、シューマンは?ショパンのピアノ曲ほどの人気はない。だが、シューマンのピアノ曲を聴いたことがある人はどれほどいるだろうか?たぶん、ピアノ協奏曲イ短調は聴いたことがあるだろう。ショパンのピアノ協奏曲もある。だが、協奏曲としての色合いを考えると、シューマンの方はピアノとオーケストラの活躍のバランスが優れてとるし、シューマンの時代の作曲家ですら思い付かなかったアイデアが満載されとる。実に凄い協奏曲である。しかも、その曲の中に自分の愛妻クララへのメッセージをも込めるという離れ業をやってのけとる。一方で、ショパンのピアノ協奏曲はというと、確かに素晴らしい曲であることは間違いないのだが、協奏曲の割りにオーケストラの持ち味と言えるダイナミックな響きが抑えられとる。ショパンは、オーケストラよりピアノにかなり重心を置いたがため、ピアノは大活躍しとる。あれほどピアノが活躍する協奏曲は滅多にない。そのため、オーケストラの活躍する場面が相当削られることになったのだと思う。それは、ショパンがやりたかったことなのであろう。だが、両者の協奏曲を比較したとき、シューマンの協奏曲が優れとる点がかなり目立つ。ピアノが大好きな人はいる。オーケストラにあまり興味のない人もいる。そういう人は、ショパンの方が圧倒的に凄いと感じるだろう。しかし、私は協奏曲である以上、両者の掛け合いや両者の持ち味を存分に発揮した曲が好きである。そのように考えると、シューマンのピアノ協奏曲の方が私は好きだし、世間一般でも広く演奏されとる。

シューマン

 では、次に協奏曲ではなく、ピアノ独奏曲について。私が最初に聴いたのは、「クライスレリアーナ」である。それまで、知っとるシューマンの曲は、ピアノ協奏曲と交響曲だけであった。その印象を持って聴いたところ、驚きの連続だった。印象がまるで違うからである。時代を超越しとると思った。要はドビュッシーの時代、即ち1900年頃に作曲され始めた曲だと思ったから。シューマンがどれほどの作曲能力を持っとったかがこの曲で分かる。他の曲も同様である。煌びやかな楽想のようで難解な楽想でもあり、尚且つ哲学的でもある。この三つの要素を曲に込めることは不可能であろう。なぜなら、三つの要素はそれぞれに対して反発する意味を持っとる。だから、シューマンのピアノ曲は非常に難しい曲が多く、なかなか理解できない。室内楽についても書きたいと思う。有名なのは、ピアノ四重奏曲とピアノ五重奏曲であろう。後、弦楽四重奏曲。ピアノ四重奏曲とピアノ五重奏曲は、間違いなくその分野での傑作である。突出しとると言っても過言ではなかろう。詳しいことは、それぞれの曲の解説で書こうと思うから、これ以上のことは書かない。が、シューマンは、分かり易い曲も作曲するし、一方で極めて難解な曲も作曲する。通常、作曲家は年と共に成長し曲もどんどん難解なものになっていく。もちろん、深みが増すという意味。だが、シューマンは若かりし頃に既にそれをやっとるのである。シューマンのことを考えれば考えるほど凄い作曲家であることが分かる。

シューマン

 不思議なことを少し書きたい。シューマンの曲は前述のとおり、相反発するような要素を同梱しとるため、複雑な構造をしとる。そのような曲を作曲できた人はシューマン以後に一人だけ存在する。R.シュトラウスである。彼の曲は非常に難解で様々な要素が同梱されとる。構造も複雑を極めとる。私にはR.シュトラウスにはシューマンの魂が宿っとったとしか思えないのだ。本当にシューマンらしい曲を多数作曲しとる。シューマンは本当に伝えられとる病院で亡くなったのであろうか。甚だ疑問が残る。
(4.18.2022)


曲目解説&名盤紹介(お薦めの名盤など)


交響曲

交響曲第1番変ロ長調「春」OP.38
交響曲第2番ハ長調OP.61
交響曲第3番変ホ長調OP.97
交響曲第4番ニ短調OP.120

協奏曲

ピアノ協奏曲イ短調OP.54

室内楽

ピアノ四重奏曲変ホ長調OP.47
ピアノ五重奏曲変ホ長調OP.44

ピアノ曲

幻想曲集《クライスレリアーナ》OP.16
ピアノソナタ第1番嬰へ短調OP.11

クララ.シューマン

歌曲「フリードリヒ・リュッケルトによる3つの詩」OP.12 第2,4,11曲
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