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Helene Grimaud
エレーヌ.グリモー

名盤紹介

シューマン「クライスレリアーナ」
ブラームス「ピアノ・ソナタ第2番嬰へ短調」

エレーヌ.グリモー

曲目:シューマン「幻想曲集《クライスレリアーナ》OP.16」
   ブラームス「ピアノ・ソナタ第2番嬰へ短調OP.2」
ピアノ:エレーヌ.グリモー
レコーディング:不明
場所:オランダ、市役所講堂

 調べてみたら、このアルバムは、彼女の2枚目にリリースしたアルバムのようである。ジャケットの写真を見れば明らかに10代半ば以下であろう。既にこの時、スーパーピアニストの域に到達しとったのである。凄いテクニックの持ち主というだけでなく、思いもつかない解釈の中で、そのテクニックを自然に使用するのである。それは、やりたくても不可能なのでは?と思う箇所を確実に難無く凄腕のテクニックで弾きっていく。聴いていて惚れ惚れするし、テクニックをひけらかしとるわけでもないので、実に自然に聴こえる。

 さて、このアルバムの選曲を見て欲しい。シューマンの「クライスレリアーナ」ブラームスの「ピアノ・ソナタ第2番」である。シューマンの曲は有名な曲であるが、ブラームスの方は、さほど耳にしない曲名ではなかろうか?実はこの2曲、因果関係がありそうなのだ。これについても、彼女はその時、気付いたことなのだと思う。だからこそ、この2曲の選曲になったのだと思う。実際、彼女がリリースしたアルバムの選曲は実によく考えられとる。彼女の意思が関係しとることは間違いない。他の演奏者では、このような選曲にはなっていないから。

 では、この2曲の関係を紐解いていこう。2曲の内容は、それぞれリンクをクリックしてもらえば、解説のページに飛ぶから、詳しい内容はそちらを読んでいただきたい。ここでは、簡単に解説しておく。まず、「クライスレリアーナ」について。この曲は、その当時のドレスデンの宮廷楽長のポストにいたクライスラーという者についての曲である。このクライスラーという者は、非常に怪しい人物で、ロマであった。だからこそ、宮廷の音楽を取り仕切りながらも周囲を苦しめ続けた。相当な危険人物であったことが曲から窺える。曲は、宮廷内での出来事という第1曲から」始まり、クライスラーが次々と悪事を行うのだが、巧く隠ぺいする。しかし、第7曲で、その悪事が周囲にバレて糾弾され真っ逆さまに落ちていく。終曲では、クライスラーの鬱屈した心情が表現され、最後、ブツリとクライスラーが事切れたように曲が終わる。

 ブラームスの「ピアノ・ソナタ第2番」も同じような楽想になっとる。最後はシューマンとは少し違う。クライスラーが事切れることは間違いないのだが、その後の様子が表現されとる。それは、明らかに周囲の心が落ち着いて、気持ちが楽になっていく様子と受けとれる。「クライスレリアーナ」は、1850年頃に改訂が加えられたのだが、実はブラームスの「ピアノ・ソナタ第2番」もその頃完成しとる。だから、この2曲は2人が示し合わせてクライスラーへの当て付けのように披露したのではあるまいか。たぶん、正解だと思う。

エレーヌ.グリモー

 彼女は、そこまで見抜いてこの2曲を選択したのであろう。たぶん、彼女を誘導した人がいる。何故なら彼女の取り巻く環境を考えると、ロマがうようよ蠢いとるからだ。ロマは凄い人物を見つけると、貼り付いて攻撃をし続ける。だから、彼女の味方が彼女に敵の存在をいち早く教える為にも、過去の音楽家たちも奴等と戦ったことを彼女に伝えたのであろう。そして、凄い演奏のアルバムをリリースした。シューマンもブラームスも納得の演奏であろう。私は脱帽しかできない。この一枚でシューマン、ブラームス、エレーヌ.グリモーの凄味を味わえる。

お薦め度:S+
(April.24.2022)
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