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Jean Sibelius
シベリウス

曲目解説&名盤紹介

交響曲第1番ホ短調

曲目解説

 シベリウスの交響曲ほど自由に作曲された曲は少ないと思う。形式を無視したとかそういう自由ではなく、発想が自由なのだ。そして、これほど美しい自然を思わせる曲も少ない。人の感情を全く感じないのもシベリウスの曲の特徴である。シベリウスは愛妻家で新しく建てた家を妻の名前アイノを取って、アイノラと名付けた。このアイノラへ移る前にこの交響曲第1番と交響曲第2番は作曲された。実はアイノラへ移る理由はシベリウスの健康を気にする妻アイノの提案によるものであった。シべリウスは、愛飲家で相当飲み歩くタイプ。そのため、健康を害し始めていると判断したアイノは、パブのないところへの移住を提案し実行した。やはり、生活が変わると人の感情というものも変わる。シベリウスが作曲する曲の楽想も変化していった。さらに深みが増し、難解になったのだ。だが、シベリウスの一番人気の交響曲は、移住前に作曲された第2番である。第1番も負けじと魅力に溢れている。

 楽想について。この曲を聴いていると、様々なことを思う。分厚く表情豊かなヴァイオリンの主題を聴いているとチャイコフスキーの影響が少しあるのではないかとか。どの主題を聴いても劇的で、とある話の付随音楽のようでもある。また、厳しい北欧の大自然も楽想に見事に合致する。これほど多様な面を表現するシベリウスのオーケストレーションも見事という他ない。スケールも大きくシベリウス独特のオーケストレーションである。

第1楽章
 静かな情景から描写が始まる。様々な自然の情景を見ているような感覚に陥る。この楽章はソナタ形式で書かれているが、それを聴き取るのは素人には難しい。変化する表情を理解するので精一杯となる。この曲を聴くにあたってソナタ形式を聴き取る必要はどこにもないが、私が言いたいことは、それほど難しい曲ということ。難しくしているのは、第4楽章の項でも書くが、曲が見せる表情が多彩であるということに他ならない。



第2楽章
 この楽章の表情からは、どう聴いてもフィンランドの冬の厳しい情景しか思い浮かばない。冷たいのだが、透き通っていて明鏡止水である。曇りがなく澄んだ水面を湛えた湖や湖に沈む倒木。そのような情景が思い浮かぶ。

第3楽章
 スケルツォ。強烈なティンパニの打撃で曲が始まる。このティンパニの主題は随所で登場し迫力を持たせる。第2主題は、スケルツォとは思えないほどに深く穏やかである。これほどスケールの大きいスケルツォを作曲できたのは、他は後期のベートーヴェンやブルックナーぐらいであろう。もちろん、この二人の色合いとは全然違うスケルツォである。シベリウスの曲はスケルツォですら表情が多彩なのだ。

第4楽章
 後期のベートーヴェンやブルックナーの曲は長大で大迫力である。シベリウスの曲は大迫力ではあるが二人とは違う。表現しているものが違うように思う。ベートーヴェンやブルックナーが想定している楽想はスケールが大きい。二人ともスケールの大きい楽想が好きなのだ。一方、シベリウスの場合、スケールの大きさは一つの表現と捉えていたように思う。シベリウスの最大の特徴は、第1楽章と第3楽章の解説でも少し書いたが多彩な表現にあると思う。同一楽章内で表情が目まぐるしく変わり、何度聴いても新しい表情を発見する。分かり易く言うと、山の頂上に居たかと思うと、あっという間に湖の畔にいる。そうかと思えば、草原の中にいる。普通、これほど急に表情を変化させると、曲が支離滅裂になる。私はそのように思ったことすらある。だが、実際は支離滅裂どころか恐ろしく感動を呼ぶ音楽である。これは、間違いなくシベリウス独特の誰にも真似できない特徴であろう。この第4楽章フィナーレも最終楽章に相応しく様々に表情を変えながら上昇して終結部に至る。終結部でも、表情が変化し大パノラマの大自然が目に浮かぶような旋律をヴァイオリンが分厚く歌い上げる。そこへ曲の終結を告げる金管が加わり、さらなる大パノラマを見せて幕となる。



名盤紹介


 
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