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Johannes Brahms
ブラームス

曲目解説&名盤紹介(お薦めの名盤など)

ヴァイオリン協奏曲ニ長調

曲目解説

 ブラームスは交響曲第2番を作曲した避暑地ペルチャッハで数年後ヴァイオリン協奏曲も作曲した。この曲に対するチャイコフスキーの評に私は賛同するところがある。「詩情が不足している割に異常なほどに深遠さを装っている」というもの。確かに詩情は薄く感じられる。その割に深みが結構ある。もっと悪く言うと、薄っぺらなメロディーの割に装飾が多いということ。チャイコフスキーの言いたいことは分かるが、ブラームスはチャイコフスキーほどのメロディーメーカーではない。チャイコフスキーのメロディーが凄すぎるのだ。だが、ブラームスの曲も交響曲はどれも内容が随分濃い。

 このブラームスのヴァイオリン協奏曲はブラームスが一人で書き上げた曲ではない。ブラームスの友人のヴァイオリニスト、ヨーゼフ・ヨアヒムに助言を求めている。手紙でやり取りした後、さらにブラームスの元を訪れ助言をしている。この曲で装飾過多だとチャイコフスキーが思ったところは、たぶん、ヨアヒムの助言を受け入れたところではなかろうか。当代随一のヴァイオリニスト、ヨアヒムからすれば、ブラームスのヴァイオリン協奏曲を思い付く限り素晴らしいものにしようしたのであろうが、視点がヴァイオリニストであるため、これでもかと装飾を施す助言ばかりになったのであろう。そして、それが多すぎたということではなかったか。だが、ブラームスはヨアヒムの助言を全て受け入れたわけではない。これは、ヨアヒムの助言が必要以上に多かったと推測できる。ブラームスは、チャイコフスキーのように参考にしたい曲のスコアを読み解き、自分で作曲するべきだったのではなかろうか。助言を求めすぎてしまったのであろう。ブラームスの実力ならできたはず。

 しかし、この曲は傑作である。詩情は確かにブラームスの交響曲ほどではない。ブラームス得意の胸に迫るほどの哀愁のメロディーではないが、儚い美を感じるメロディーである。そして、ピアノ協奏曲第1番ほどではないが、シンフォニックで分厚い曲である。独奏がヴァイオリンということを考えたらピアノ協奏曲第1番のような分厚さではまずいと思う。であるから、これが絶妙なバランスではなかろうか。

第1楽章
 儚い旋律の主題である。ソナタ形式の2つの主題、どちらも儚さを聴き取れる。普通は、どちらかが明るかったりするが、この曲は違う。だが、ブラームスはオーケストラによる合奏のときは、明るさが出てくるようにしているので、それで対比を作り出したようである。これが、傑作である所以になっていると思う。この曲は、独奏ヴァイオリンの凝った演出に聴き入っていると、盛り上がる箇所でブラームスの協奏曲らしく分厚いオーケストラがしなやかに歌いあげる。カデンツァも他の協奏曲では聴けない高い芸術性を感じ、聴き応えMAXである。

第2楽想
 冒頭、オーボエの切ない旋律が魅力的で、そのままヴァイオリンに引き継がれる。ここは、ヴァイオリニストの腕の見せ所で、心を込めて歌いまくるところである。ヴァイオリニストが旋律を巧く歌わせることができるかで第2楽章の良さは決まる。また、この楽章は、譜面どおりの平板な演奏ではとても感動できない曲である。

第3楽章
 疾走とまではいかないが、心地よいスピードで曲は進行する。主題も明朗で第2楽章までのしっとりした気持ちが一気に晴れ渡る。この楽想の転換、さすがブラームスである。ヴァイオリンの装飾・歌い方も実に魅力的で、いつまでも曲が続いて欲しいとすら思う。

ブラームス&ヨアヒム

 通常、3大ヴァイオリン協奏曲というと、ベートーヴェン、メンデルスゾーン、ブラームスであるが、私にとっての3大ヴァイオリン協奏曲を考えてみた。まず、シベリウス。これは外せない。次にバーバー。数年前に良さが分かって嵌まってしまった。次は、このブラームスかメンデルスゾーンである。実はブラームスのヴァイオリン協奏曲の方がそれを酷評したチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲より私は好きである。確かに装飾過多かもしれない。だが、上手いヴァイオリニストが弾くと、絶妙な装飾となりメロディーに適度な深みを付加する。この曲は演奏者を選ぶということかもしれない。超絶技巧を持っていればよいという曲ではない。

名盤紹介

・バティアシュヴィリ/ティーレマン/SKD お薦め度:S

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指揮:
管弦楽:

 
お薦め度:
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