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Bruno Walter

著作権について

LUDWIG VAN BEETHOVEN
ベートーヴェン

曲目解説&名盤紹介

交響曲第4番変ロ長調

曲目解説

ベートーヴェンの交響曲中、この曲ほど指揮者によって表情が大きく変わる曲はない。オーソドックスな演奏だと、シューマンが語ったような交響曲に聴こえる。シューマンは、このように語った。「2人の北欧神話の巨人の間にはさまれたギリシアの乙女」と。2人の北欧神話とは第3番と第5番のこと。しかし、凄まじい気迫で疾風怒濤のように駆け抜ける力強い演奏もある。指揮者の解釈によって印象が大きく変わる。

第1楽章
 序奏付きの楽章である。通常古典派の交響曲では、第1楽章はソナタ形式で書かれ、第1主題と第2主題が登場し絡み合い、発展し、終結部を迎える。この曲も同様にソナタ形式で書かれている。また、序奏も付いている。この序奏でも、指揮者によって大きく表情が変わる。オーソドックスな演奏はしなやかに。力強い演奏は力強い本編とは逆に深く静かに奏される。本編とのギャップを持たせるためだ。
 本編に入ると、演奏によって、しなやかに歌うか、それともきりりと引き締まった踊りをするか、というほど違う第1主題が登場する。第2主題も同様。オーソドックスな演奏は歌を楽しみ、力強い演奏は迫力と躍動感を楽しむことになる。どちらの演奏がよいかは人による。どちらにせよ、気持ちのよい曲である。



第2楽章
 古典交響曲では、難しいソナタ形式の第1楽章を受けて、第2楽章は緩徐楽章となっており、歌のある、ほっと一息入れられる構成になっている。この曲でも同様に明るく安らぐ歌心溢れる曲となっている。ベートーヴェンの偉大なところの一つに難しい曲を書くかと思えば、このように歌心溢れる曲も書けるところがある。

第3楽章
 ベートーヴェンによる「スケルツォ」との指示はないらしいが、明らかにスケルツォである。ベートーヴェンの多くの曲は苦悩との闘争を描いている。スケルツォ楽章でも闘いのような曲想が必ず現れる。だが、この第4交響曲は、闘いの要素はほとんど感じられない。明るいのだ。かと言ってベートーヴェンらしくないとも言えない。シューマンが言うようなしなやかな演奏では生き生きしているし、力強い演奏では躍動感がある。どちらにせよ、明るさがベースにあるから、聴いていて心が弾むし元気が出てくる。

第4楽章
 この楽章はもう、言うことがないほど完璧な楽想。何が言いたいかというと、前3楽章を受けて最高の締めくくりということ。明るさどころか、喜びの爆発。これ以上ない、"Happy End"である。普通、人はハッピーエンドを好む。ベートーヴェンの曲もほとんどがそう。この曲に至っては、明るく幸福感が弾けて聴く人を元気付ける。結局、ベートーヴェンの曲は、どの曲も聴く人を勇気づけたり元気づけたりする。



名盤紹介

ワルター/CoSO お薦め度:S+
バーンスタイン/NYP お薦め度:S+

ワルター/コロンビア響(1958)

Walter/CoSO

指揮者:ブルーノ.ワルター
管弦楽:コロンビア交響楽団
録音:1958年2月8、10日

 ベートーヴェンの4番を初めて聴くとき、大抵3番、5番、6番、7番、9番を聴いた後に聴くであろう。これらの5つの曲を聴いた後だとどうしても物足りなさを感じてしまう。実際、私がそうだった。その当時、ベートーヴェンの曲だから必ずもっと感動するはずだと思い何度も何度も聴いた。だが、全ての音を記憶しても、さほど感動の大きさに変化はなかった。だが、カルロス.クライバーのを聴いたとき、前述の5曲と同じような衝撃的な感動に襲われた。そこで認識したことはカルロス.クライバーの凄さとこの曲は演奏によって大きく変化する曲だということ。それ以来、クライバー以外で好きになった演奏は少ない。現在、まだカラヤンの4番を聴いていないが、フルトヴェングラー&ベルリンフィルとムラヴィンスキー&レニングラードフィルの演奏のみである。そして、大好きな指揮者のワルターの4番もカラヤン同様聴けてなかったが、とうとう聴くことができた。



 さすが本人だけあって、曲の内容、特徴を理解しつくしている感がする。細部に至るまで他のどの指揮者からも聴けなかった特徴が聴ける。ベートーヴェンがどのように演奏してほしかったのかが分かる。前述の指揮者以外の一般的な演奏を聴くと、この曲の印象はこじんまりして巧くまとまっていて、優しさに溢れる曲の印象受ける。だが、このワルターのを聴くと、ワルターらしい包み込むような優しさを感じる一方で、ベートーヴェンらしく雄大で逞しく力強い印象を受ける。第1楽章では、ワルターの特徴でもあるのだが、管弦楽のバランスが絶妙である。非常に心地いい。ずっしりとした基盤となっとる低弦と各楽器のハーモニーが、聴く者の胸を抉るような感動を送り届けてくれる。4番のこんな演奏は聴いたことがない。第2楽章のあの優しさに溢れる旋律は、この演奏以上のものは聴けないであろう。ワルターの第3楽章を聴くと、やはりカルロス.クライバーの解釈も正しいことが分かる。スケルツォなのだが、ワルツのような楽想が聴き取れる箇所がある。実に優しく切々とベートーヴェンが聴衆に語りかけてくるような印象を受ける。第4楽章も実に深い。ベートーヴェンの他の交響曲では、終楽章は力強くぐいぐい聴く者を高揚させていく。この4番の終楽章は、それらと少し違う。力強さに加えて明るく優しい楽想が挿入されているため、高揚していくのだが、最終的に拳を突き上げたくなるような感動にはならない。だが、間違いなく最終的にやってくるのは幸福感である。ベートーヴェンとワルター、一体どちらが凄いのか?無論、両者であろう。同一人物な気がしてならない。

お薦め度:S+
(2022.9.21)
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意見・要望
L.Bernstein/New York Philharmonic(1962)

Bernstein/NYP

Conductor:Leonard Bernstein
Orchestra:New York Philharmonic
resordinng:1961-64

How great L.Bernstein and NYP are! This resording was done in 1962. I thought that their recordings provide really originality and novelty to listener. Whenever I listened to their Mahler symphony, I got courage and pride. I was a teenager. Although it's overblown, I thought I couldn't live without classical music. Especially their Mahler symphony are innovative and highly original. I thought that their Beethoven symphonies are as original as their Mahler symphonies.

Today I listen to Beethoven symphony no.4 by L.Bernstein and NYP. About Beethoven symphony no.4, My favorite CD is the K.Cleiber conducts. This Bernstein interpretation is too similar to K.Kleiber's. A strong influence from K.Kleiber can be heard. Bernstein was actually a conductor who used other conductor's interpretations quite a bit. Pretty clever!
Recommendation:S+(This S+ is dedicated to K.Kleiber)
(March.17.2019)
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